この記事の要約
AV新法は商業AVだけでなく、他人を出演させる個人配信やmyfans運用でも無関係とは言い切れない論点があります。契約、同意、撮影から公開までの期間、取消権の扱いを軽く見るのは危険です。
この記事では、AV新法の基本、個人配信との境界、コラボ時の注意点、書面・年齢確認・同意記録の重要性を整理します。法務判断は断定せず、必要に応じて専門家へ確認してください。
2022年に施行されたAV新法(AV出演被害防止・救済法)は、商業AVの世界を一変させました。そして、その地殻変動の受け皿になったのが、myfansをはじめとするファンクラブ型の個人配信です。「個人配信はAV新法の対象外だから自由」という言説が界隈に流れていますが、これは半分正解で、半分は危険な間違いです。どこまでが対象外で、どこからが対象なのか。境界線を間違えると、個人でも新法の当事者になります。
この記事では、AV新法の中身を30秒で整理した上で、個人配信への適用の境界線、そして業界26年・出演10,000本超のAV男優である森林原人のようなプロたちがmyfansに流れ込んでいる「プロの逃げ場」の構造まで、全部書きます。僕は弁護士ではないので、これは約70名の運用と業界観察からの実務整理です。個別案件の最終判断は必ず専門家に確認してください。
AV新法とは何か。30秒版
正式名称は長いので通称で呼びますが、AV新法は一言でいうと、性行為の映像作品への「出演」をめぐる契約を厳格に規制して、出演者を保護する法律です。柱は4つ。①出演契約は書面で交付する義務、②契約から撮影まで1ヶ月、撮影終了から公表まで4ヶ月の期間を空ける義務、③公表から1年間、出演者は理由を問わず契約を解除できる(施行直後の経過措置期間は2年でした)、④解除されても制作側は出演者に賠償請求できない。違反の類型によっては行政措置や罰則も用意されています。
要するにこの法律は、「制作する側」と「出演する側」の契約関係を規制しています。ここが、次の境界線の話のすべての鍵です。
本題。個人配信は対象外なのか
ソロ配信、つまり自分1人で撮って自分で売る場合。 新法が規制するのは出演契約ですが、あなたが自分自身を撮って売るとき、そこに「制作者と出演者の契約」は存在しません。契約が存在しない以上、書面交付も期間ルールも適用する場面がない。だから「ソロの個人配信は実務上、新法の適用場面がない」という理解は、概ね正しい。界隈で言われる「個人は対象外」の根拠はここです。
しかし、他人を出演させた瞬間、話が変わります。 コラボ企画、ハメ撮り、カップルの相手、出演者を募っての撮影。あなたが誰かを撮って、その映像を販売・公表するなら、あなたは規模に関係なく「制作して公表する側」であり、相手は「出演者」です。法人か個人か、商業AVかmyfansかは、この構造に関係ありません。新法の境界線は「プロか個人か」ではなく、「他人を出演させるかどうか」に引かれている。 ジャンル別マップで天井が最強と書いたコラボ・企画運用系は、つまり新法の実務がそのまま乗ってくる領域だということです。カップルも例外ではなく、パートナーは法的には出演者になり得ます。
プロの逃げ場の構造。なぜ森林原人はmyfansにいるのか
境界線を押さえたところで、市場で起きていることを見ます。新法の期間ルール(撮影から公表まで4ヶ月)と1年間の無条件解除は、出演者保護としては前進でしたが、商業AVの制作側には強烈なブレーキになりました。公表まで4ヶ月寝かせる資金負担、公表後も1年間は「作品が消えるかもしれない」リスク。結果、制作本数の絞り込みと出演機会の減少が起き、プロの男優・女優・監督の収入基盤が痩せた。
その受け皿がファンクラブ型個人配信です。象徴的なのが森林原人で、業界26年のトップ男優が、myfansで解説コンテンツも絡みも、さらには「限定復活する元AV女優」との企画までやっている。この動きの構造分析は森林原人の解剖記事で書きましたが、要は商業AVで縛られたスピードと自由度を、個人配信の直販で取り戻しているわけです。年間ランキング1位を獲ったAV監督さもあり×るるたんの座組(解剖はこちら)も同じ文脈にあります。監督の撮影技術と女優のブランドが、商業流通を介さずファンから直接回収する。新法が意図せず作り出した、プロの新しい主戦場です。
個人勢にとって、これは2つの意味を持ちます。1つは競争環境の変化。あなたの隣の棚に、10,000本の経験を持つプロが並ぶ市場になったということ。素人らしさ・関係性・ニッチ特化など、プロと正面衝突しない設計の価値はむしろ上がっています。もう1つはノウハウの流入。プロの撮影・見せ方・座組が公開市場で観察できるようになった。学ぶ側に回れば、これほどの教材はありません。
コラボ勢の実務。「対象外だと思ってた」が一番危ない
他人を出演させる側に回る(または既に回っている)人向けに、実務を書きます。原則は1つ、新法水準の出演者保護を、規模に関係なく自主基準にすることです。
具体的には、出演条件の書面化(報酬、公開範囲、顔出しの範囲、販売期間)、年齢確認の記録、撮影内容の事前説明と同意の記録。ここまでは新法以前に、トラブル防止の最低限です。その上で、新法の適用があり得る立場だと自覚するなら、期間ルールや解除権の扱いを含めて、契約の組み方を一度専門家に確認してください。そして「出演者から公開停止を求められたら、揉めずに止められる設計」にしておくこと。販売計画に解除リスクを織り込むのは、カップル運用の撤退設計(この記事で書いた取り決め4項目)と同じ発想です。相手の同意の上にしか成立しない商売だという原則は、法律があってもなくても変わりません。なお、これとは別レイヤーで、アダルト配信の営業自体には映像送信型性風俗特殊営業の届出(風営法の記事)が必要です。新法・風営法・刑法(モザイク)は、それぞれ別の法律として全部満たす必要があります。
よくある質問
Q. ソロ配信なら、書面も何も要らないということですか? 出演契約の書面は、契約相手がいないので作りようがありません。ただし、ソロでも風営法の届出、モザイク基準、税務は全部残ります。「新法の適用場面がない」ことと「法的義務がない」ことは別物です。
Q. カップルで撮っています。恋人相手でも新法の対象になるのですか? 恋人・配偶者だから自動的に除外、という作りにはなっていません。あなたが撮って販売する映像に相手が出演している以上、出演者保護の問題は構造として存在します。少なくとも、条件の書面化と「相手が止めたいと言ったら止める」設計は、法律論以前に必須だと考えてください。
Q. 新法の施行前や、ルールを知らずに撮った過去のコラボ動画はどうなりますか? 過去分の法的評価はケースバイケースで、ここで断定はできません。実務的な優先順位としては、①現在販売中のものについて出演者の同意状態を確認する、②同意の記録が曖昧なものは、追認の形で条件を文書化し直す、③相手と連絡が取れない・揉めているものは販売を止めて専門家に相談する、の順です。
Q. 出演者から「削除してほしい」と言われました。応じる義務はありますか? 法的な結論は契約内容と経緯によりますが、実務の答えは明確で、基本は応じる前提で設計しておくべきです。新法の思想は「出演者はやめられる」であり、揉めて争った場合のあなた側の分の悪さと炎上リスクを考えれば、公開停止に応じた上で条件(返金や費用)を話し合う方が、ほぼ常に安く済みます。
Q. 新法に違反すると、どんな罰則がありますか? 違反の類型によって、行政による指導・命令や、悪質な勧誘行為等への罰則が定められています。ただし罰則の有無で行動を決めるのは間違いで、この法律の本質は「出演者の同意なしに成立する商売はない」という原則の明文化です。罰則に触れなくても、同意を欠いた運用は民事・刑事の別のリスク(性的姿態撮影等処罰法など)に必ず引っかかります。
まとめ
AV新法は出演契約を規制する法律で、境界線は「プロか個人か」ではなく「他人を出演させるかどうか」にあります。ソロ配信は契約が存在しないため実務上適用場面がなく、他人を出演させれば個人でも制作公表側。新法が商業AVを萎縮させた結果、森林原人のようなプロがmyfansに流れ込む「プロの逃げ場」構造が生まれ、個人勢には競争激化とノウハウ流入の両方が起きています。コラボ側に回るなら、書面・年齢確認・同意の記録・止められる設計を自主基準に。新法・風営法・モザイクは別々の法律で、全部満たして初めて適法な営業です。
自分の座組(ソロ・カップル・コラボ)が新法との関係でどの位置にいるのか整理したい方、コラボの契約や同意の取り方を設計したい方は、お問い合わせから状況を送ってください。論点の整理と、この分野に慣れた専門家への繋ぎ方まで含めて答えます。





