2024年12月15日、品川インターシティホールで「ミス&ミスター東大コンテスト2024」の本番が開かれた。主催は東京大学広告研究会。グランプリは松藤百香さん。

その3日前の12月12日、Xでひとつのアカウントが動き出す。名前は「星野あおい ミス東大」。初日の投稿は「一瞬で消す。いいねした人限定で潮お〇にを…」。これがいいね5,212、表示34.7万。

本物のファイナリスト名簿のどこを探しても、星野あおいという名前はない。2024年にも、2025年にもだ。それから1年半後の今、彼女のmyfansはジャンル別日間ランキングでオ◯ニー2位、◯吹き3位に立っている。
名簿にいないミス東大がなぜ売れ続けるのか、公開情報だけで分解する。
基本データ
例によって、数字はすべて公開情報(2026年6月時点)。

X(@aoi_misstodai_2):フォロワー6.6万、ポスト約1,600、フォロー14。bioは「20/160/H ミス東大2025を目指してがんばってます」
旧X垢(@misstodai_aoi):2024年4月の外部ブログに埋め込みが残っているが、現在は消滅
Instagram(misstodai_aoi):フォロワー14.4万、投稿244。名義は「ミス東大2025星野あおい」
myfans(misstodai_aoi):投稿60件、いいね20.5K、フォロワー16.5K、フォロー0。ジャンル別日間でオ◯ニー2位・◯吹き3位・素人19位
myfansプラン:VIP単月¥19,000、12ヶ月契約で¥7,600。ほかに「お潮堪能」¥9,980、「はじめまして」¥3,980、0円のお試しプラン(対象投稿0件)
YouTube「ミス東大2024あおい」:登録5.7万、総再生794万、動画26本。2024年1月23日開設、2025年9月にBAN
TikTok(@misaoi2024):フォロワー6.4千、動画57本。約1年更新停止
lit.link:myfansの個別投稿への直リンク2本、FANTUBEのガチャ、X3アカウント(本垢のほか@todaisei_no_aoi、@aoi_beer)
誘導用の自前短縮ドメイン:shiofuki-blog.com(中身はリダイレクト専用)
名簿と照合する
ミス東大は実在のコンテストだ。東京大学広告研究会が主催し、MISCOLLEという大学コンテストのポータルに公式の出場者ページがある。2024年のミス側ファイナリストは5人。下重智華子、石垣心、舩澤帆津美、渡邊琴巴、松藤百香。2025年も5人。趙子易、春日愛実、丸山穂乃果、須賀ありさ、入江あんな。星野あおいの名前は、どちらの年にもない。
公式ファイナリストにはアカウントの命名規則まである。2025年ならXは@ut2025_missの後ろにエントリー番号、Instagramは@miss_todai番号_2025。あおいのハンドルはどの規則とも噛み合わない。

しかも本人の媒体間で、名乗っている年度がバラバラだ。myfansのbioは「ミス東大2024の星野あおいです」。XとInstagramは「ミス東大2025」。BANされたYouTubeの概要は「ミス東大2024出場予定です」のまま、TikTokも「ミス東大2024を目標にがんばります」のまま放置されている。そして2026年6月現在、Xのbioはまだ「ミス東大2025を目指してがんばってます」だ。2025年のコンテストは半年前に終わっている。
設定の管理が雑、という話をしたいんじゃない。むしろ逆で、この雑さが売上に一切響いていないという事実のほうが、よほど多くを語っている。
ついでに言うと、「ミス東大」は設定として特殊だ。誰でも10秒で検証できる。名簿は公開されていて、グランプリは報道される。元読モとか元社長秘書みたいな照合不能の肩書きと違って、白黒が完全につく。だからこのアカウントは、「検証可能な設定は、検証されたら終わるのか」という問いの、ほぼ理想的な実験になっている。結果は次の章だ。
とっくにバレてる
時系列で言うと、この設定は開始3ヶ月でバレている。
YouTubeチャンネルの開設が2024年1月23日。その3ヶ月後の2024年4月20日、個人ブログが検証記事を出した。論旨はシンプルで、2024年の東大ミスコンはこの時点でまだ開催すらされていないのだから、「ミス東大2024」という肩書きは成立しようがない、あくまで設定だろう、というもの。
同じ記事はもう一歩踏み込んで、顔がAIではないかという説まで展開している。どれだけ動いても前髪が揺れない、顔だけ不自然に白い、頭身のバランスがおかしい。体は実在の人物で、顔だけAI美女に差し替えた合成ではないか、という筆者の見立てだ。YouTubeランキングサイトのユーチュラでも、このチャンネルには「CG」「AI」「ディープフェイク」のタグが付けられている。ちなみにこの手のブログには「ノーブラ散歩系のAI顔YouTuber」を扱った記事が他にも大量にあって、あおいは一点物じゃなく、すでに業界として認知されたフォーマットのひとつとして紹介されている。
真偽は確認できない。僕に言えるのは、これらの指摘が第三者の手で2年前から公開され続けている、ということだけだ。
で、ここからが本題。バレた後どうなったか。
2024年4月のブログ記事の時点で、YouTubeの登録者は2.6万だった。BANされる2025年9月までに5.7万。指摘が出てから倍以上に伸びている。Xのリプ欄も実際に遡ってみたが、設定を追及する声はまず見当たらない。並んでいるのは絵文字と、「理性を保つのが大変だった」みたいな降参宣言だ。

もっと言うと、あの検証記事自体がオチを持っている。設定を暴いた本文の後半で、筆者はあおいのmyfansへのリンクを貼り、YouTubeで見れない過激な配信はこちら、と案内している。暴く記事が、そのまま導線として機能してる。本人が反論も削除依頼もしない理由はたぶんこれで、検証されることすら集客になるなら、放置が最適解になる。
一番象徴的だったのがこれだ。5月18日の投稿にリプが3件ついていて、うち1件はXに「スパムの可能性がある返信」として折りたたまれていた。告発か晒しでも隠れているのかと開いてみたら、出てきたのは「待ち受けにしてみたよ」と、写真をスマホの壁紙に設定したスクショを上げるファンだった。リプ欄の最深部、機械がスパム判定した領域まで掘っても、いるのは信者だけ。

客は設定の真偽を調べない。調べた人間の記事は2年前から誰でも読める場所にあるのに、購買行動は1ミリも変わっていない。この商売において「ミス東大が本物かどうか」は、争点ですらなかった。
【ご報告】という連載
じゃあ何が数字を作っているのか。投稿履歴を時系列で並べると、答えがはっきり浮かぶ。このアカウントのエンジンは設定じゃない。【ご報告】だ。
2024年12月14日「炎上中のち〇び投稿に関して『全員に見せます。』」が表示23万。12月26日、女の子とお風呂に入るので動画をこっそり撮る宣言。12月31日「年始にご報告があります。。」が表示161万、いいね7,199。2025年1月4日「今回はすべて見せます。」で22万。8月15日、本日24:00に彼氏との動画を公開。8月23日「※すぐ消しちゃうかも」。12月25日「ついに公開します。」2026年4月19日「はじめての3人で。」5月30日「ハ〇り解禁。」そして6月7日「"妊娠"疑惑について明日ご報告があります。」
型がひとつしかないのがわかると思う。疑惑なり予告なりを立てる。翌日か数日後に「ご報告」する。開放する。これを数週間に1回のペースで、1年半回し続けている。

このシリーズを読んできた人は、ミルの回を思い出してほしい。ミルのbioも「軽率におっぱい報告しちゃうお姉さん」で、彼女も報告という言葉を看板にしていた。ただ、ミルの報告は耳打ちだ。日常の延長で「〜してきた」と、フォロワーひとりひとりの耳元にささやく型。距離を縮めて、関係の濃さを売る。あおいの【ご報告】は正反対で、芸能人の結婚発表と同じ記者会見の型だ。壇上から観客全員に向けて発表して、その日のタイムラインを事件にする。同じ報告という言葉を使いながら、ミルは客との距離を縮める道具に使い、あおいは客をひとつの発表に集めて囲い込む道具に使っている。ささやきが関係を作り、ご報告が事件を作る。
ミルの回はこちら →ここにURL
平常運転との落差も数字に出ている。「おはよん」系の日常投稿や、「私を彼女にするメリット」みたいなネタ投稿は表示1.6万〜2.7万、いいね150〜320あたりが定速。そこに【ご報告】が挟まると、表示が5万、20万、161万と跳ねる。日常で接触頻度を保ち、ご報告で爆発させる2段構えだ。
直近の妊娠アークも、この型の応用にすぎない。6月7日に疑惑を立てて(いいね830、表示5万)、6月9日に「"妊娠"について。」(表示6.8万)。そして報告スレッドに本人が間髪入れずぶら下げたのが、shiofuki-blog.comの短縮リンク(myfansへの誘導)だった。妊娠は人生の報告じゃなく連載の新章で、新章の発売には告知リンクが付く。
題材の選び方にも必然がある。露出のエスカレートには物理的な上限があって、「全部見せます」を一度やってしまえば、見せるもので煽れる余地は減っていく。1年半回した連載が次に上げられるのは、見せるものじゃなく、起きることのほうだ。彼氏、3人、そして妊娠。身体の開示から人生の展開へ、エスカレートの軸を乗り換えている。ついでに言えば、妊娠という題材はこれまでと違う嗜好の客層も新規で拾える。
ここを見誤ると、このアカウントの分析を間違える。「ミス東大」という設定は客を引き込む入口で、客を留めているのは設定じゃなく、この終わらない連載のほうだ。前回は一部だけ見せた、今回は全部見せる、次は何を見せる。プロットは毎回それだけで、それで十分に回っている。設定の年度すら直さない運用でジャンル日間2位が取れるのは、回っているのが連載だからだ。
本物の決勝の3日前
このアカウントで僕が一番うまいと思っているのは、価格でも連載でもなく、始動のタイミングだ。
Xのプロフィール上、アカウントの作成は2023年11月になっている。ところが遡って確認できる最古の投稿は2024年12月12日。13ヶ月分の投稿が存在しない。消したのか寝かせていたのかは確認できない。確実なのは再始動の日付のほうだ。
2024年12月12日。本物のミス東大2024は、12月14日23時59分にWEB投票を締め切り、12月15日に品川で本番を迎える日程だった。つまりこのアカウントは、「ミス東大」という検索ワードが1年で一番熱くなる3日間の初日に初投稿でいいね5,212を取り、投票最終日の12月14日に「全員に見せます。」で23万表示を取った。12月27日には「ミス東大の二人で脱衣チャレンジ」で27万。大晦日の「年始にご報告があります。。」で161万まで持っていった。
普通に考えれば、偽物が一番隠れたい時期だ。本物が話題になる週は、名簿と照合される機会も最大になる週で、世間が本物のグランプリの名前を知るタイミングに名簿にいない人間が「ミス東大」を名乗るのは、検証リスクの面では最悪の選択に見える。
この運用者は逆に張った。本物のコンテストが集めた注目をそのまま流入に変換して、立ち上げの初速にした。検証リスクの側はどうしたかというと、前の章の通りだ。照合する客はいない。2024年4月からバレているのに伸び続けた8ヶ月の実績が、バレることがコストにならないと先に証明していた。隠れるんじゃなく、コストゼロと見切って一番明るい場所に立つ。グレーであることと、設計として一級であることは矛盾しない。この始動は一級だ。
もうひとつ付け加えるなら、初日の投稿がすでに完成形だったこと。「一瞬で消す」「いいねした人限定」という、消滅予告といいね集めを一体化させた煽りが、再始動初日から装填されている。普通、アカウントには手探りの時期がある。投稿の型が定まらず、反応を見ながら調整する数ヶ月だ。このアカウントにはそれが存在しない。13ヶ月の空白のどこかで型を仕上げてきたのか、最初から仕上がった人間が運用に入ったのか。どちらにせよ、素人の初投稿じゃない。
導線は素人の仕事じゃない
初日から完成していたのは投稿だけじゃない。導線を分解すると、こうなっている。
入口は4つ。X(6.6万)、Instagram(14.4万)、生前のYouTube(5.7万)、TikTok(6.4千)。最大のInstagramは際どい写真と日常だけの無料ゾーンで、設定を演じる劇場として回っている。
中継点がlit.link。ここで面白いのはリンクの張り方だ。普通はmyfansのプロフィールページに飛ばす。あおいのlit.linkには、myfansの個別投稿へ直接飛ばすリンクが2本置いてある。プロフィールで迷わせず、財布を開く画面まで一直線。FANTUBEのガチャへの直リンクもある(現在FANTUBEはサービス終了)。
Xからの導線はもう一段手が込んでいて、投稿に貼られるのはshiofuki-blog.comという独自ドメインの短縮リンクだ。調べてみたら、このドメインの中身はブログでも動画サイトでもなく、リダイレクト専用のブランド短縮ドメインだった。要するに自前のbit.lyを建てている。クリックを計測できて、リンク先を後から差し替えられる。Xの古い投稿は編集できなくても、リダイレクト先を変えれば過去の導線が全部生き続ける。

X垢も1隻じゃない。lit.linkには本垢のほかに@todaisei_no_aoiと@aoi_beerが並んでいて、本垢がこれらをリポストする。同じ人物に入口を複数用意して、相互に浮力をつける編成だ。
煽りの使い分けも整理されている。X上では「一瞬で消す」「いいねした人限定」「本日24:00に公開」「※すぐ消しちゃうかも」と、日付で区切らない流動的な限定だけを使う。日付で区切るのはmyfansのbio側で、「中出し動画解禁中 5/20まで」とある。無料側は今逃すと消える、有料側は日付までに買え。役割が分かれている。
ひとつ注意書き。myfansのプラン画面に出る「1本あたり¥452」のような換算表示や、長期契約の割引率はプラットフォームの標準機能で、本人の発明じゃない。本人の意思が出ているのは、VIP単月¥19,000という強気の定価と、0円プランの対象投稿を0件にして無料では1秒も見せない設計のほうだ。ちなみに覆面講師は同じ自動計算で「1本あたり¥6」と表示されていた。452÷6で約75倍。大量出品の薄利と、少量出品の厚利。同じmyfansという箱の中で、正反対の価格設計が両方成立している。
0円プランの存在意義も誤解しやすい。無料で見せるためじゃない。対象投稿0件なのだから、入っても何も見れない。それでも0円の箱を置いてあるのは、フォロワーとして登録させて、新作の通知が届く線を1本確保するためだ。タダで配る箱じゃなく、連絡先を回収する箱。無料で味見させて課金に上げる覆面講師の階段設計とは、ここも真逆になっている。
あと、myfansのbioにはこうある。「身バレが怖いので絶対秘密にしてください」。名簿にいない人間に、バレる身は本来ない。それでもこの一文が要るのは、客を秘密の共有者にするためだ。秘密を守ってあげる側に回った客は、設定を壊す側には回らない。

設定はプラットフォームより長生きする
このアカウントの2年半は、土台が死に続けた2年半でもある。
YouTubeは2025年9月にBAN。登録5.7万と総再生794万がその瞬間に消えた。TikTokは1年以上止まっている。Xは旧垢の@misstodai_aoiが消滅して、現垢のハンドルには「_2」が付いている。lit.linkに残っているFANTUBEは、プラットフォーム自体が2026年4月に終了を発表した。覆面講師の回を読んだ人なら見覚えがあるはずだ。あの覆面講師が今年1月に撤退した、あのFANTUBEだ。
つまり4つの土台のうち無傷なのはInstagramくらいで、それでも「星野あおい」は死んでいない。むしろmyfansのランキングは現在進行形で上がっている。土台がいくら飛んでも、設定と連載と、リダイレクトの差し替え先だけ持って次へ移ればいい。覆面講師の回で、土台は全部死ぬ前提で作れと書いた。あおいの運用は同じ前提を、もっと露骨に体現している。人が資産なんじゃない。設定が資産で、設定はBANできない。
ここで、ミルと覆面講師とあおいの3人を並べたい。ミルは自分という実在の人間を、中量の出品と中単価で売った。覆面講師は人間を消して、ブランドだけを大量と低単価で売った。あおいは人間を作って、少量と高単価で売っている。単価レンジは順に¥1,500〜5,000、¥3,800〜7,840、¥3,980〜19,000。人間の実在性が薄まるほど単価が上がっているのは、たぶん偶然じゃない。実在の人間には限界と生活があるが、作られた人物には物語しかない。物語は原価ゼロで、続きはいくらでも書ける。
学ぶのは「ミス東大」じゃない
先に釘を刺しておく。実在のコンテスト名や肩書きを名乗るやり方は、真似するべきじゃない。なりすましとして通報されるリスクも、権利者や主催団体から刺されるリスクも、全部自分持ちになる。あおいが今のところ無事なのは結果論で、再現を保証する材料はどこにもない。
持ち帰るべきは構造のほうだ。3つある。
1つ目。設定は、客の頭の中で勝手に物語が走り出すギャップで作る。「ミス東大を目指す子が脱ぐ」は商品説明じゃなく予告編だ。清純な肩書きと過激な中身の落差そのものが商品で、これは元社長秘書でも、研修医でも、オリジナルの設定で同じ構造が組める。実在の名簿と照合できない設定なら、そもそも今回僕がやったような検証も成立しない。
2つ目。設定より連載に投資する。あおいの数字を作っているのは肩書きじゃなく【ご報告】のサイクルだ。疑惑、予告、開放。客に「次は何が来る」と思わせ続ける装置のほうが、設定の作り込みより売上に効く。始動の日取りも同じ発想で決まっている。世間の注目が勝手に集まる日に被せて立ち上げれば、初速の広告費はゼロで済む。これはオリジナル設定でも丸ごと使える。
3つ目。土台が死んでも設定を持ち出せる作りにしておく。導線の真ん中に自前の短縮ドメインを一枚挟む。プラットフォームのフォロワーは借り物で、自分の資産は設定と物語だけだと割り切る。あおいはBANと凍結とプラットフォーム終了を食らいながら、その全部を生き延びた。
最後に。客は真実を買っていない。2024年4月から「設定だ」と書かれ、AI合成説まで貼られたアカウントが、2年伸び続けてジャンル日間2位にいる。プロレスの客席は台本の存在を知っている。知った上で、技が決まれば本気で沸く。スパム箱の中で写真を待ち受けにしていたあのファンは、たぶん騙されていたんじゃない。乗っていたんだ。売る側に要るのは客を騙し切る精度じゃなく、乗りたくなるリングを建てる設計力だと、この1年半が証明している。名簿に名前がなくても、リングは建つ。






